雛祭り~父(先代)との想ひ出

中学生の頃だったか、母が何かの所用で家を空けていた時の事。

父と息子ふたりの3人きりでの一週間。

その日、理由は忘れてしまったが、学校から帰ってきたふたりは父に怒られ、息子対父のまま険悪な雰囲気に。

 

「晩飯できたで」

僕たちは黙ったまま不貞腐れた顔で食卓へ。

元来、手先が器用な上、料理好きなので母の留守中などには当然、父が料理をしていた。

テーブルの上には、ゆで卵に板海苔なんかで器用に作られた雛人形ごはん。

3人のあいだに漂う、重苦しい空気とは裏腹にお内裏様とお雛様が優しく微笑みお皿に並んでいた。

小さな声で「いただきます」

たぶん、3人とも一言も発しないまま食べ終えたと思う。

食後、父はいつも通りテレビの前で横になり、

僕たちは、やはり黙ったままで皿洗いや片付けをした。

結局、最後まで雛人形ごはんについては誰も触れることのないままだった。

 

父が亡くなってから八年が過ぎようとしている今でも、

毎年、三月三日をむかえるたびにあの日の出来事を思い出す。

 

お父さん、ありがとう。

俺もチビッ子兄弟の父親になりました。親父のように器用でもなく、料理も妻に任せきりだけど、あの時とおんなじような雛人形ごはんを子供たちに作ってみたいと思う今日この頃です。

早朝の豊後豊岡駅